ガン検診をしても死亡率は減らないとアメリカの研究者が発表


オレゴン健康科学大学医学部のVinay Prasad准教授が「ガン検診が死亡率に影響を与えた証拠はない」と発表し、大きな議論を呼んでいる。
検診にはメリットとデメリットがあるとのこと。

————————————————————
「ガン検診で死亡率が低下しているデータはない」と研究者が発表 – GIGAZINE
http://gigazine.net/news/20160112-cancer-screening-mortality-rate/

ガンは1981年から日本人の死因の1位に君臨し続け、非常に恐ろしい病気として認知されています。ガンによる死亡を防ぐには早期発見と早期治療が重要視されており、早期発見のためにガン検診を毎年受診する人がいます。ガンを早期発見して死亡率を減らすためにガン検診があるわけですが、オレゴン健康科学大学医学部のVinay Prasad准教授が「ガン検診が死亡率に影響を与えた証拠はない」と発表し、大きな議論を呼んでいます。

Why cancer screening has never been shown to “save lives”—and what we can do about it | The BMJ
http://www.bmj.com/content/352/bmj.h6080

ガン検診に関する調査を行ったPrasad准教授によると、ガン検診により死亡率が下がっているのは肺ガンなど特定のガンをすでに患っている患者であり、一般的な死亡率は、乳ガン・結腸ガン・前立腺ガンの検診方法が確立された後でも減少したというデータはないとのこと。言い換えれば、ガン検診はすでにガンと診断された患者の死亡率を下げることがあるものの、そのほかの人の死亡率を下げるには至っていないということになります。

Prasad准教授はガン検診によって発生するリスクについても明らかにしています。例えば、前立腺特異抗原を測定する前立腺がんの検査「PSA検査」では、本来は陰性であるのに陽性と判定された例が多数あり、本来、不必要であるにも関わらず前立腺に特殊な針を刺して組織を採取する「前立腺生検」を受けた患者が多数いるとのこと。前立腺生検は前立腺に多数の針を刺すため、直腸出血や血精液症、血尿といった軽度の合併症をしばしば発症させます。さらに、前立腺ガンと診断された男性患者の中には、心臓発作を起こす患者や自殺する患者がいるなど、ガンの治療による合併症で死に至るケースもあるそうです。

また、Prasad准教授の調査では女性の約68%が「乳房X線撮影が乳ガン発症の危険性を下げる」、62%が「ガン検診で乳ガンの罹患(りかん)率が半減する」と信じており、さらに約75%が「10年間のガン検診は、女性1000人当たり10人を乳ガンよる死亡から救っている」と考えていることが判明。Prasad准教授によると、ガン検診のデータをどれだけ甘く見積もっても上述のような数値にはならず、ガン検診に過度の信頼を寄せている女性の多さが浮き彫りになりました。

ガン検診の非有効性を示すデータが医学界で注目を集める中、スイスの国立医療委員会は毎年乳ガン検診を受けることを推薦しない方針を打ち出しました。アメリカでも子宮頸ガン検診の標準頻度が、毎年ではなく2年以上に1回に変更されています。

Prasad准教授は「ガン検診は、病歴から必要と判断された人にだけ有用になるものであり、検診のメリットとデメリットを患者にきちんと話してから受けるべきで、誰にでも受けさせるべきものではありません」と、安易にガン検診を受けることに対して警告しています。

ガンの死亡率を下げるためには、治療法の開発や技術の向上などが必要になりますが、新しい治療法や技術の開発には長い時間がかかります。これを考慮すると、早期発見から治療につなげられるガン検診が重要であるのは間違いありません。しかしながら、日本の医療界にもガン検診の必要性や危険性を訴える識者がいるのも事実であり、今後はガン検診に関する議論が進められる可能性があります。
————————————————————
(一定期間が過ぎると消えてしまう有用なニュースを掲載しています。)