(ニュースから)ゆうちょ銀行上場が地銀を潰す?地銀の既得分野を食い荒らし、下位行は容赦ない淘汰か
人口減少が深刻な東北は、九州と並んで地方銀行再編の震源地とみられている。全国の地銀で再編の機運が高まる中、東北の各銀行のトップが慎重な姿勢を崩していないのは意外である。
2014年11月18日付河北新報電子版記事『地銀再編機運 東北は慎重』は、14年9月中間決算の発表の席で、金融再編について語った頭取たちの語録を載せている。
・七十七銀行(仙台市)「何も考えていない」
・東邦銀行(福島市)「地域の成長を金融面から手伝うのが最大の使命。現時点では単独で達成できる」
・北日本銀行(盛岡市)「自主独立で進む」
・岩手銀行(盛岡市)「常に対応策を考えておく必要がある」
・青森銀行(青森市)「再編は一つの選択肢」
・仙台銀行(仙台市)「再編の流れは特別なことではない」
・フィデアホールディングス(仙台市)「地方銀行が営業基盤の県内に閉じこもるだけでは許されない」
再編についての考え方の違いは、経営統合や合併を経験したことがあるかないかの差といえるかもしれない。
例えば、北都銀行(秋田市)と荘内銀行(鶴岡市)が統合して発足したフィデアHDの里村正治社長は「なんらかの決断をしないといけない時代に入った」との見方を示す。さらに合併については「同じ考えであれば『一緒にやりませんか』という気持ち」と、再度合流の可能性を否定しない。
●ゆうちょ銀行の上場が地銀再編の起爆剤になる
地域や銀行の規模によって、再編に対する考え方は異なる。横浜銀行と東日本銀行の経営統合が表面化した昨年11月以降の首脳の発言をまとめた14年12月1日付日本経済新聞記事『全国81行調査』によると、「4割が将来の再編を選択肢の1つとして考えている」と解説している。日経は特に隣県のトップ地銀同士が経営統合に踏み切る九州や、人口減少が深刻な東北で再編に前向きな意見が目立つと指摘している。
実際のところ、東北の地銀頭取の胸中はどうなのだろうか。過半数の首脳は再編の可能性を否定したが、鷹揚に構えてはいられない事態のはずだ。それは地銀最大のライバルであるゆうちょ銀行が、今年いよいよ上場するとみられているためだ。
政府が100%の株式を持つ日本郵政が、金融子会社のゆうちょ銀行、かんぽ生命と同時に、今年秋にも東京証券取引所に上場する計画をまとめた。ゆうちょ銀行が上場すれば、経営の自由度が増して、住宅ローンを手始めとして地銀が得意とする領域に進出してくることは確実だ。
東北の地銀11行・2グループの預金残高は32兆円(14年9月末)。これに対してゆうちょ銀行は預金残高165兆円(14年3月末時点)を有する日本最大の金融機関であり、東北6県の預金残高の合計は10兆円(同)。地銀の預金は企業が主力だが、ゆうちょ銀行は個人預金が中心だ。
ゆうちょ銀行は現在、国債の引き受けを担っているが、株式を公開して利益を追求することが至上命題になれば、地銀のおいしいところを食い荒らして激しく競合するのは目に見えている。地銀最大の脅威になり得るゆうちょ銀行に対抗するため、業界再編は一気に加速するはずだ。従って、ゆうちょ銀行の上場が地銀再編のクライマックスになることは間違いあるまい。
●福島、岩手の地銀は再編必至?
そんな状況下、福島県では福島銀行(福島市)と大東銀行(郡山市)の2つの第2地銀の経営状態が芳しくないが、救済する大手が見当たらない。金融当局は水面下で東邦銀行に救済を再三打診したといわれている。福島県の指定金融機関である同行は、60歳定年の幹部行員を管理職として再雇用する制度を導入し、一般行員は65歳から70歳に雇用期間を延長するなど、ベテランを戦力化している。東京や茨城にも2店舗ずつ出店し、福島県以外の企業に融資を拡大しており、経営は安定している。そんな東邦銀行にとって、県内の2つの第2地銀を受け入れるメリットは乏しい。
また岩手県を見てみると、県内最大の岩手銀行、戦後地銀である東北銀行(盛岡市)、第2地銀の北日本銀行がある。
岩手銀行は三菱東京UFJ銀行が第3位の大株主で、岩手県の企業局が第5位、岩手県が6位の株主となっているが、岩手県関連の持ち株を合わせると筆頭株主になる。
東北銀行は岩手県内のシェアが1割程度しかなく、公的資金を受け入れている状態だ。岩手銀行が東北銀行を合併するのが一つの流れとみられているが、東北銀行は県内の商工会議所関係者が戦後地銀の第1号として設立した経緯もあって、すんなりとはいかないようだ。融資の約9割は個人と中小企業向けであり、大口顧客は少ない。
北日本銀行は県内のほか、宮城に11店舗、青森に5店舗など、秋田、福島、東京にも店舗があり、みちのく銀行(青森市)が合併に名乗りを上げる可能性がある。また、仙台銀行と山形の第2地銀・きらやか銀行(山形市)が設立した、じもとホールディングスも、北日本銀行の合併を視野に入れているのか気になるところだ。北日本銀行、みちのく銀行の大株主であるみずほ銀行の意向も無視できない。みずほ銀行と三菱東京UFJ銀行が大株主になっている青森銀行が、北日本銀行に関心を示すことも考えられる。
しかしなんといっても東北の地銀再編は、預金額、貸出金額ともに東北最大の七十七銀行がどのような勢力図を描くかによって大きく変わってこよう。同行の氏家照彦頭取は、「未来永劫と決めるわけにはいかないが、近未来は(合併を)を考えていない」と統合の可能性を否定している。建前は建前としてチャンスを待っているのだ。一説には「七十七銀行は仙台以北の銀行には興味がない」(東北地方の有力地銀の頭取)ともいわれているが、大株主の三菱東京UFJの判断を含め、今後同行がどのような動きをするのか注目したい。
「ゆうちょ銀行」上場が地銀再編にもたらす影響 – ライブドアニュース
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