(ニュースから)「TPPで日本再生」とは笑わせる 対米追随でやせ細った日本
【お金は知っている】「TPPで日本再生」とは笑わせる 対米追随でやせ細った日本 (1/2ページ) – 経済・マネー – ZAKZAK
http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20151009/ecn1510091140005-n1.htm
1985年9月22日、ニューヨークのプラザホテルに日米独(当時は西独)英仏の5カ国(G5)の蔵相・中央銀行総裁が集まって、ドル高是正のための国際協調で合意した。筆者はその日、たまたまニューヨークに出張していて、記者会見場に駆けつけた。
壇上では、身長2メートル超のボルカー米連邦準備制度理事会(FRB)議長の脇で、議長の肩にも届かない小柄な蔵相の竹下登氏(当時、後に首相)が頭の上に手をかざして背比べのまねをしておどけている。
対米協調は表看板、内実は対米追従の日本という構図を取り繕おうとする、竹下氏特有の照れ隠しだったのだろう。実際に、合意後日本の大蔵省と日銀は米国の求めに応じて、通貨・金融政策を展開することになる。
合意前1ドル=240円前後だった円の対ドル相場は急上昇を続け、ドル下落に歯止めがかからなかった。87年2月にパリ・ルーブル宮殿で開かれたG7(G5とイタリア、カナダ)蔵相・中央銀行総裁会議で決まった為替相場安定のためのルーブル合意は不発で、同年10月19日にはニューヨーク・ダウ工業平均株価が一挙に22・6%安と、史上最大の暴落に見舞われた。
G7の中で米国に忠実なのは日本だけである。米国の意を受けて、日本の大蔵省は日銀に圧力をかけて利下げさせ、超金融緩和を続けさせた。あふれる円資金は国内の株と不動産市場に流れ込んで、バブルを膨張させた。一部は米国向けの不動産や証券投資や直接投資に振り向けられ、米市場に寄与する。
ブラックマンデー後、米国は日本など外部の資金に依存する世界最大の債務国となり、対外債務を膨らまし続けていく。対照的に、日本のほうは世界最大の債権国として債権を増やし続けていく。
一般社会では通常、カネの貸し手のほうが豊かで、借り手が貧しいはずだが、日米の国家間となると逆である。債権国日本はやせ細り、借金国米国が太る。名目国内総生産(GDP)でみると、85年に比べ2014年の日本は1・5倍にとどまり、米国は4倍になった。米国は日本のカネのおかげで株式市場が活性化し、株価が先導する形で景気を拡大させてきた。
国内でカネが回らない日本はデフレ不況。財政赤字圧力が増す。それを理由に財務官僚は増税、歳出削減という緊縮財政を政権に飲ませて、デフレを慢性化させた。カネはますます米国に向かう。
12年12月に発足した第2次安倍晋三政権は「アベノミクス」によって、円安株高を誘導してきたが、14年4月からの消費税増税によって再びマイナス成長軌道に引き返してしまった。
円安のおかげで企業は利益を大幅に改善させたが、国内向け投資には慎重で、代わりに米国での企業買収に血道を上げる。今回、大筋合意したTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)も対米追随路線の延長上だ。「TPPで日本再生」とは笑わせる。
(一定期間が過ぎると消えてしまう有用なニュースを掲載しています。)