(ニュースから)GDP大減速…消費税10%凍結必至 アベノミクス効果に陰り

 消費増税の影響は想像以上に大きかった。アベノミクスで景気回復への期待感が膨らんでいたが、増税直後の4~6月期国内総生産(GDP、季節調整値)速報値は、東日本大震災以来という大幅な落ち込みとなった。安倍政権は、来年10月に消費税を8%から10%へ再び引き上げる予定でいるが、賃金上昇の実感がわかないなかでの再増税に、専門家からは「デフレ不況に逆戻りする」「10%は凍結すべきだ」と厳しい声が上がっている。

 日本経済に急ブレーキがかかった。

 内閣府が13日発表した4~6月期のGDPは、物価変動を除く実質で前期比1・7%減、年率換算は6・8%減と大幅に悪化した。

 東日本大震災が起きた2011年1~3月期(年率6・9%減)以来の落ち込みで、消費増税の影響をモロに受けた格好。前回増税時の1997年4~6月期(年率3・5%減)よりも悪いという惨状だった。

 安倍政権にとってアベノミクスを通じたデフレ脱却は最優先の課題で、政権幹部は「景気回復を腰折れさせるわけにはいかない」と断言する。

 首相官邸は「想定の範囲内」(政府筋)と表向きは平静を装うが、サラリーマンにとって増税インパクトは大きく、これをきっかけに財布のヒモは一段と締まった。

 ファミリーレストランを運営するロイヤルホールディングスの菊地唯夫社長は「4月、5月はあまり増税の影響がなかったが、6月下旬から出始めている」と話し、「じわじわ増税の実感が高まっている」。大手百貨店でも「サラリーマンがちょっと頑張って手が届く価格水準の商品が動いていない」と警戒感を強めている。

 再増税に関しては、12年に成立した消費税増税法で来年10月に10%へ引き上げることが定められているが、同法の付則では経済状況の好転が増税の条件とされている。安倍政権は、7~9月期のGDPなどの経済指標を参考に12月に判断するが、厳しいとの見方は少なくない。

 経済アナリストで獨協大教授(労働経済学)の森永卓郎氏は「状況はかなり深刻だ。物価は上昇し続けており、実質賃金は戦後最大級の落ち込みを記録している。今回のGDP悪化について、政府や官僚、御用学者らは『消費増税前の駆け込み需要の反動』と口をそろえるが、お金がないから消費ができないだけだ。状況が改善されていないのに今後、消費が急回復するなんてことはあり得ない」と指摘。

 「注目は7~9月期のGDP2次速報値が出る12月。ここで安倍政権は、さらなる金融緩和に踏み切ることになるのだろうが、再増税すれば、物価はさらに上昇し所得は減る。Wパンチで国民生活は逼迫する」とみる。

 その上で、森永氏は「消費税率を5%に戻すのが一番いい景気対策だが、現実的ではない。金融緩和に踏み切りつつ、消費税率引き上げを凍結するのが現時点で取れるベターな選択だ」と解説した。

 生活経済のご意見番、経済ジャーナリストの荻原博子氏は「(企業の)収益が上がっていないのに消費税を上げてしまったから、景気が冷え込んでいる。実質賃金も12カ月連続で下がっている。こんな状況では消費税を10%に上げられないし、上げるべきではない。これ以上の消費税アップは無理難題だ」と話す。

 アベノミクスの効果も表れていないと荻原氏は分析し、「円安で輸出が増えて、企業がもうかり、景気が良くなるというストーリーだった。だが、ガソリンの高騰など、円安のマイナスの副作用が目立っている。輸出も低迷し、自動車工業界の統計によると、4輪車の出荷台数は7カ月連続でマイナスとなっている。トヨタの好調は為替の好影響によるもの。輸出台数が減ったことで、下請けは厳しい状況が続いている」と話す。

 10%の引き上げを強行するとどうなるのか。

 「7割の人が勤める中小零細は収益が増えず、賃金を上げられない。すると、モノを買わなくなり、デフレは加速するだろう。安倍政権は、景気をよくするために10兆円規模のバラマキを行ったが、もうあのお金はない。アクセル(=バラマキ)をふかしながら、ブレーキ(=消費増税)をかけることはもうやめてほしい」(荻原氏)

 景気回復の足取りがおぼつかない中、安倍政権は難しい判断を迫られそうだ。

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