(ニュースから)マイナンバー汚職 「1兆円市場」群がるIT業者 大規模システム、大手有利で中小苦戦

マイナンバー汚職 「1兆円市場」群がるIT業者 大規模システム、大手有利で中小苦戦:イザ!
http://www.iza.ne.jp/kiji/events/news/151013/evt15101320350029-n1.html

 来年1月の運用開始に向けて準備が進むマイナンバー制度をめぐる汚職事件が13日、明らかになった。制度をめぐっては、情報処理システムの大規模な改修や新設が見込まれており、発注総額は「1兆円規模」ともされる。激烈な受注合戦が繰り広げられる中、生まれた官業の癒着。そうした“巨大利権”に警視庁は捜査のメスを入れた。

 ■マイナンバー“特需”

 「IT業界にとってのマイナンバーは、建設業界にとっての東京五輪と同じ。巨大な需要をめぐり業界は沸いている」

 政府関係者はそう指摘する。政府は制度の導入に絡み、平成29年度までに3千億円弱を情報処理システム関連に投入する見込みだ。民間側のシステム更新も含めると、市場規模は1兆円に達するとも言われる。

 厚生労働省、国税庁、総務省といった各省庁で、税金などの処理システムがマイナンバーに対応。事件の舞台となった厚労省では、年金▽ハローワーク▽労災▽医療保険-の4分野がマイナンバーに関与する予定だ。

 収賄容疑で逮捕された厚労省情報政策担当参事官室室長補佐、中安一幸容疑者(45)は、医療とITの双方に精通する専門家として、マイナンバーへの対応を主導していた。

 政府関係者は「業界にとって一種の特需といえるが、過去のシステムを運用してきた既存の大手業者が有利で、中小企業が中央省庁の大規模案件に参入するのは厳しい」と分析する。

 ■官公庁が「業績左右」

 贈賄側の東京都千代田区のIT関連会社はそんな“中小受難”とも言える逆風に挑み、事業を獲得していった。

 信用調査会社などによると、このIT関連会社は資本金3千万円、従業員15人の中小企業だが、特に医療関係のシステム開発を中心に最盛期の22年9月期には計8億9800万円の事業を受注していた。

 事業の中心は官公庁。23年は今回の立件対象となった11月の2件の応札だけで売り上げの3割を占めていた。27年9月期には2億4100万円を受注したが、発注元は全て官公庁で、「官公庁との関係が会社の業績を左右していた」(捜査関係者)。

 事件の舞台となった企画競争入札では、業者の出した企画書を発注元が審査して事業の委託先を決める。コストだけでなく、政府の意図に響くアイデアの提案が求められる。

 捜査関係者は「政府の意図を知っていれば、大手でなくても参入できる余地がある。中安容疑者と業者の癒着が生まれる余地があった」と指摘する。

 ■贈賄側時効でも「立件」

 今回の事件は、現金のやり取りから既に4年が経過しており、IT関連会社側は贈賄罪の公訴時効(3年)が成立している。

 供述が重要な証拠となる贈収賄事件では、贈賄側が時効となるケースでは、立件は困難とされてきた。贈賄側は立件の心配がなく、供述が得やすい半面、供述の信用性は薄れるためだ。

 それでも警視庁が収賄側の立件にこだわったのは、今後も関連事業で多額の発注が見込まれるマイナンバー制度が利権と化し、不正が続発することを牽制するためだ。

 制度は、民主党政権が「税と社会保障の一体改革」を掲げたことで正式に始動し、現在導入に向けた準備が進むが、情報漏洩(ろうえい)への対策などをめぐって、反対意見も根強い。捜査関係者は「一罰百戒というわけではないが、マイナンバー制度が新たな不正の温床になることはあってはならない」と話している。

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