(ニュースから)「那覇の象徴」の設計、なぜ中国企業に委託?

 11月16日に投開票が行われる沖縄県知事選。在日米軍の辺野古移転が主要な争点になっているが、肝心の県民の生活についてはどうなのか。基地問題さえ解決すれば、沖縄県民は豊かで幸せになれるのか。9月に沖縄を視察した次世代の党の西野弘一衆院議員が、県知事選に隠れた沖縄の実態について熱く語った。

 「沖縄が抱える問題は基地問題だけではないのに、県知事選ではそればかりがクローズアップされている。そして肝心の沖縄の人たちの生活については、後手後手の状態です。要するに、現実が見えていません」

■ 「オスプレイの騒音を体感」

 実は西野氏は、毎年沖縄を訪れている。今年9月の訪問では普天間基地が移転を予定している辺野古を見学し、アルフレッド・マルグビー在沖米国総領事の邸宅にも招かれた。

 「マルグビー総領事と懇談していた時のことです。『オスプレイが飛んでくる』というので、急いで庭に出たのです。空を見上げると、あの特徴的な両翼が目に入りました。MV-22オスプレイは耐え難い騒音だと聞いていましたが、想像したよりも音が小さいですね。米軍が使用する軍用ヘリコプターのCH-60の方がずっとうるさい。あれは両手で両耳を覆わなくては、とても耐えられませんから」

 これは一般に伝えられている印象とずいぶん異なっている話だ。

 「安全性についても、誤った情報が流されていました。オスプレイの事故率は10万飛行時間当たり1.93で、海兵隊飛行機の平均2.45よりも低いのです。『事故率が高い』と批判されたのは、試験段階の数字です。つまり基地問題は、左翼のイデオロギー闘争の材料に利用されてきたというわけなのです」

 歪められたイデオロギー闘争で基地問題が紛糾した結果、沖縄県民の生活が取り残されてしまったと西野氏は考える。

 「昭和47年に沖縄が返還されて以来、日本政府は沖縄振興政策に取り組んできました。第二次世界大戦で20万人もの住民が犠牲になったことや、アメリカの施政権の下でインフラ整備が遅れたことなどから、10年ごとに沖縄振興計画を策定し、第4次までに合計10.2兆円もの資金を投下してきたのです。さらに平成24年度から新たな沖縄振興政策として年間約3000億円ずつ拠出されています。これらが最終的に沖縄の人たちの生活の向上に使われていたら良いのですが……」

■ 厳しい経済状況の原因はどこに

 西野氏が懸念する通り、沖縄県の実態は非常に厳しい。

 「沖縄県の生活保護率は2.4%と全国で5番目に高い。しかも65歳以上の高齢者の受給率が4.93%と突出しています。米軍統治下で年金制度の加入が遅れたことによる無年金者が存在すること、そして県民所得が低いことなどが原因なのです」

 1人当たり県民所得については沖縄県は201万8000円で全国最下位だ。全国平均(291万5000円)の69%にすぎない上、全国最高位の東京都(437万3000円)と比較すればわずか48%と、半分にも満たない。

 さらに必要最低限の生活を維持する収入のない人の割合を『絶対的貧困率』といい、就業世帯のうち最低水準以下の所得しかない世帯の割合を『ワーキングプア率』というが、山形大学の戸室健作准教授の調査によると、沖縄県はそれぞれ29.3%と20.5%でワーストワンという結果になっている。

 「昔なら、働けなくなった老人を若者が助けながら生活したでしょう。しかし今は、それをしたくてもできないというのが現実なのです」

 失業率も離婚率も沖縄はワーストワンだ。西野氏は述べる。

 「離婚の最大の理由は経済事情です。そしてそれは子どもの教育にも影響しており、高校進学率も大学進学率も全国最下位です。とくに大学進学率は36.9%と、全国の54.3%を大きく下回っています。問題はこうしたことが貧困の悪循環になりえてしまうことです」

 もし沖縄復興資金が十分に有効に使われたなら、こうした問題は緩和されたのではないかと西野氏は述べる。大学が新設されれば、進学の機会が増大する。また無年金問題についても解決できるだろう。そもそも沖縄が復帰した当時、政府は年金未納期間の追加支払いだけを認めていたことが問題の原因だ。この時に経済的理由で追加支払いができなかった人たちが放置された。その結果、現在3万人が高齢者の無年金者になっている。

 「沖縄振興のための交付金は、本来はこうした人たちのために使われるべきだったのです。ところがもっぱら公共事業に消費されてきました。公共事業はその時の景気浮揚に役にたちますが、雇用を維持することができず、安定的雇用に繋がらないという問題があります」

■ 新シンボルの総費用は2億5000万円

 しかもとんでもない公共事業もあると、西野氏は述べる。

 「那覇市が計画している龍柱です。都市計画法に基づき、新しい那覇市のシンボルとして、若狭に高さ15メートルの龍柱を建設することにしたのです。総費用は2億5000万円ですが、うち1億6000万円はデザインなどを担当した中国企業に支払われるというのです。いったいこの龍柱が、どのくらい沖縄県民の生活の向上に役にたつのでしょうか。なぜ中国企業に委託したのでしょうか。せっかくの交付金が県内にまわらず、海外に流れるだけではないでしょうか」

 西野氏は続ける。

 「確かに沖縄には在日米軍の基地の74%が存在するため、その負担は小さくありません。しかし沖縄に基地を置く地政学上のメリットがあり、その恩恵は日本全体が受けているのです。よってそのコストも日本全体で広く負担することは必要で、沖縄が特別の交付金を受けることは当たり前だと思います。

 ただしそれは沖縄の人たちの生活の向上に繋がることが前提です。そこを見失った行政は、意味があるとは思えません。

 確かに在日米軍基地に関しての問題は存在します。たとえば日米地位協定です。米軍人や軍属が犯罪をおかした場合の刑事手続きで、犯罪者の身柄引き渡しについて運用面で改善されるようになりましたが、まだ完全なものではありません。それでは沖縄の人々に安心した生活が保障でいません。ただこれは高度な政治問題なので、国政のレベルで米国側とかけあうべきです」

 沖縄の問題は全国の問題だから、これからも沖縄を注視していきたいと西野氏は言う。

 「今は沖縄県知事選に注目しています。イデオロギー闘争はもういらない。それよりも沖縄の人々の生活を向上させることに熱意をもった人、必ずそれをやり遂げるという確固たる意思を持つ人に是非とも知事になっていただきたい」

「那覇の象徴」の設計、なぜ中国企業に委託?  (東洋経済オンライン) – Yahoo!ニュース BUSINESS
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