(ニュースから)同性パートナーシップ条例 入居・面会「断ったことない」 根拠曖昧…不動産業者や病院も戸惑い

同性パートナーシップ条例 入居・面会「断ったことない」 根拠曖昧…不動産業者や病院も戸惑い (産経新聞) – Yahoo!ニュース
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 「同性カップルであることが分かれば、家主から敬遠される可能性があることは本人たちも分かっている。あえて証明書を提示する人がいるのかどうか」

 個性豊かな若者たちが集う東京・渋谷。創業15年となる不動産会社で、賃貸住宅の仲介などを担当する男性は、渋谷区が進める同性パートナーシップ証明の効果に疑問を投げかける。

 たびたび同性同士の入居申し込みはあるが、「自分たちはカップル」と告白することは、まずない。2人の関係については、家賃を負担し合って生活をともにする「ルームシェア」と家主に報告する。「判断するのは家主だが、条例ができても変わらないと思う」と男性は言う。

 渋谷区は4月1日から、同性カップルに「結婚に相当する関係」を認めるパートナーシップ証明書を発行できる条例を施行させた。同性カップルが法律上の家族でないため、アパートなどの入居や病院での面会を断られる「事例が多い」との指摘があったためといい、全国初の取り組みだ。

 だが、別の不動産会社も「(同性カップルの場合も)ルームシェアという扱いでこれまでも全て受け入れている。入居を断られるといったトラブルは聞いたことがない」。区内の複数の病院からは「入院患者が拒否しない限り、誰でも面会できるようにしている」「同性パートナーであっても面会は断っていない」と戸惑いの声が聞かれた。

 区は施行にあたり、不動産会社へのヒアリングを行っておらず、病院からは質問に対する回答が得られていないといい、区議会では「拙速」との反対意見も出た。「当院だけでは対応について判断できない。医師会などの反応を待ちたい」(区内の病院)などと現場には混乱が広がっている。

 ■「性の多様性、啓発重要」

 「人間の性の多様性について肯定的な啓発が重要」と条例を提案し、成立に導いた桑原敏武前区長(79)は引退した。区長選は区議選とともに、4月19日告示、26日投開票の日程で行われた。証明書の発行や条例運用の行方は新区長の手に委ねられる。

 桑原前区長は条例が区議会の過半数を得て成立したことを引き合いに、「区長個人の意見で左右される筋合いのものではない」と牽制(けんせい)したが、区は証明書の発行にあたって必要な手続きや審査の内容など本格的なルール作りを始めたばかり。

 証明書発行の開始時期について、区の担当者は「今年度中」と述べるにとどめており、具体的なスケジュールは曖昧なままだ。

 ■「男女に特別な意味」

 同性愛など性的少数者への偏見や差別をなくす取り組みは重要だ。ただ、条例制定にあたっては「結婚に相当する関係」という証明書の効力について、憲法24条の「婚姻は両性の合意に基づく」との規定と整合性が取れるかが問題となった。憲法が男女間に限定する結婚の規定に、憲法の下に位置する条例が「相当する関係」を追加していいのかという議論だ。

 同性愛者であることを公表している豊島区議の石川大我さん(40)は「今回の条例は婚姻制度とは別物と考える。憲法では前提としての『法の下の平等』や『幸福追求権』も認められている。同性カップルは法的に保護されておらず、その欠陥を埋める意義がある」と訴える。

 一方、麗澤大学の八木秀次教授(憲法学)は「日本は古くから同性愛に対して寛容だったが、現在の法律では子供を産み、次の世代をつなぐことができる『男女の組み合わせ』に特別な意味を持たせている。同等の権利を認めることは家族観や家庭観の崩壊につながる」と指摘している。

 ■法令と条例、過去にも議論

 同性パートナーシップ条例と同様に、自治体の条例が国の法令に抵触するかどうかが議論となった事例は過去にもある。

 近年で激しい議論となったのは、神奈川県議会で平成19年に可決された知事の任期を恒久的に3期12年までとする多選禁止条例だ。

 条例案は18年にも提案されたが、憲法が定める「職業選択の自由」に抵触するなどの反対意見から否決。しかし、国の多選問題を検討する有識者会議が、多選制限の有効性を認めて「合憲」との結論を出し、議会も賛成に回って成立した。

 ただ、施行時期が「別の条例で定める日」と修正され、国が条例による多選制限を認めるよう法改正を行うまで、事実上の凍結状態となっている。

 11年には、山梨県高根町(現北杜市)の清里高原に別荘を所有する人々が、一般町民より高い水道料金を不当に負担させられているとして、水道料金を定めた条例の無効を求めて提訴。1、2審で判断が分かれたが、18年の最高裁判決は「公の施設の利用について差別的取り扱いを禁じた地方自治法に違反する」と別荘所有者の主張を認めた。

 12年には、東京都が大手銀行を対象に導入した事業規模に応じて税を徴収する外形標準課税(銀行税)条例をめぐり、銀行側が「法の下の平等に反する」として、都を相手に損害賠償を求めて提訴。1、2審とも判決では、地方税法違反を理由に都に徴収した銀行税の返還を命じ、最高裁で和解が成立した。

 渋谷区に異変が起きている。同性カップルに証明書を発行する条例制定、保養施設としていわくつきの物件購入…。識者からは「行政、議会とも機能していない」との嘆きも聞かれる。「渋谷」の現場を追った。

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