(ニュースから)【お金は知っている】移民労働拡大で経済再生は無理 肝心の生産性向上は二の次

 政府は近く発表する新成長戦略で外国人の「働き手」受け入れ拡大を打ち出す。政府はそろりと、移民受け入れに転じたのが真相だ。その大目標は少子高齢化時代の日本経済成長だが、待てよ。本当に移民で経済再生するのか。

 日本は「外国人技能実習制度」を設け、実質上は「単純労働者」とみておかしくない「技能研修生」を受け入れている。新成長戦略ではこの技能研修生の滞在期間3年を5年に延長する。2020年東京五輪を控えた建設工事での人手不足を埋め合わせる。同時に、介護福祉を外国人技能実習制度に追加する。さらに、新設する「国家戦略特区」内に限って外国人のお手伝いさん(名目は「家事支援」)の滞在を認める。

 一方で、内閣府や「経済財政諮問会議」を裏方で仕切っている財務官僚は着々と移民への地ならしをしている。例えば、内閣府は2月、報告書で出生率に加えて移民を年20万人ずつ受け入れた場合、60年で人口1億1000万人台(12年)を保てるが、移民なしでは出生率回復の場合では9894万人に落ち込むと「予測」してみせたが、計算根拠なしだ。

 移民増加で経済が再生できるなら、それだけの綿密な経済分析が必要だが、諮問会議ではおなじみの御用経済学者による「技能のある外国人材が活躍できる環境の構築でイノベーション」など、もっともらしいが、出来損ないの中学生の作文である。

 生産適齢人口(15歳以上、65歳未満)が減る中で、経済成長を維持するためには、労働生産性を高めることが必要だ。人口構成が日本とよく似ているドイツの移民は人口の15%程度になる。では、同国の労働生産性の伸び率はというと、2000年~12年の年平均で1・1%、対する日本(滞在外国人比率1・7%)は1・3%である。移民が多いからと言って、生産性が向上するわけではないのだ。

 先の御用学者は、ひたすら高度な技能と知識を持った外国人に大量に来てもらえば、イノベーションを起こすというお念仏を唱えるが、実際には高度な技能を持った人材を確保できるはずはない。

 むしろ、移民解禁となれば、上記の技能研修を名目にした外国人労働者が大量流入するのは目に見えている。というのは、それだけ、国内に需要があるからだ。需要というのは、コストの安い労働力のことで、日本の雇用構造がまさしくそうなっている。

 グラフは日本の製造業の海外志向と国内の非正規雇用の推移を追っている。企業は海外展開重視の一方で国内では正雇用の高度な人材を必要としないのだ。

 低賃金の非正規雇用をさらに低コストの外国人労働で置き換える。社内教育で長期的な視点から国内の人材を教育し、高度な人材に投資するよりも、手っ取り早く人材派遣会社に委託して労働者をかき集めるビジネスモデルが定着している。そのモデルでは生産性向上は二の次であり、経済再生につながるはずはない。

【お金は知っている】移民労働拡大で経済再生は無理 肝心の生産性向上は二の次 (1/2ページ) – 経済・マネー – ZAKZAK
http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20140620/ecn1406201140002-n1.htm