(ニュースから)AIIBをバカにしている場合か 「ODA」日本も焦げ付き2兆円超

日刊ゲンダイ|AIIBをバカにしている場合か 「ODA」日本も焦げ付き2兆円超
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/160097/1

 まるで子供の喧嘩だ。安倍首相が21日に行われた講演で、アジア向けのインフラ投融資について、今後5年間で約13兆円を投じることをブチ上げた。中国が主導して創設する「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」への対抗心をむき出しにして、「『安かろう、悪かろう』はいらない」「安物買いの銭失い」とAIIBをコキおろした。

 安倍首相が焦る理由は、AIIBを巡って、対応が後手後手に回っているからだ。英、独、仏など欧州の主要国がこぞって創設メンバーとなるAIIBの存在感は増す一方。

 これまで日本が主導する「アジア開発銀行(ADB)」は、アジア諸国に対して高飛車な態度を取ってきたが、先月、融資の基準を“緩和”する計画が発覚したばかり。このままでは、AIIBに取って代わられると、手のひらを返すように「積極的に支援します」と訴えているのが現状だ。厳しい審査のもと、支援を拒否されてきたアジア各国からすれば、「何を今さら」という感覚だろう。元外交官の天木直人氏はこう言う。

「AIIBは中国が国を挙げてとりかかっている国策です。そんな国と同じ“土俵”で戦っても、勝てるわけがない。日本は“日本の原則”で戦うべきです。安倍首相は中国に喧嘩を売るだけで、何の解決策もない。このままでは、安倍首相のプライドは満たされるかもしれませんが、日本は自滅です」

 実は外務省がホームページでひっそりと公表しているデータがある。「我が国の債務救済措置」というものだ。国際協力機構(JICA)や国際協力銀行(JBIC)が債権放棄した金額を示している。要は借金の棒引きである。その額は過去10年間で2兆円を超える。もちろん、国民の税金だ。安倍政権は「AIIBはうまくいかない」とバカにしているが、なんのことはない、日本のODAも結構“焦げ付いている”のだ。

「AIIBの構想が持ち上がった時点で、すぐに手を挙げ、中国と“ウインウイン”の関係を築くべきでした。財務省や外務省のOBも『AIIBに加盟するほうが得策』と言っています。しかし、現役官僚は間違っていたとしても、何も言いません。安倍首相に逆らうと出世できないからです。もうすぐ人事の季節ですから、なおさらダンマリでしょう」(天木直人氏)

 AIIBに対抗心を燃やしてアジア諸国への支援を増やしたら、日本の焦げ付きは、さらに増えてしまうのではないか。

(一定期間が過ぎると消えてしまう有用なニュースを掲載しています。)