(ニュースから)増税の影響「なかったこと」にしたい日銀総裁や学者 誰も口にしないお寒い現状

【日本の解き方】増税の影響「なかったこと」にしたい日銀総裁や学者 誰も口にしないお寒い現状 (1/2ページ) – 政治・社会 – ZAKZAK
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 日銀が2%のインフレ率目標達成時期について「2016年度前半ごろ」と、事実上後ろ倒しにした。その理由について、黒田東彦(はるひこ)総裁は、昨年4月の消費増税の直接的な影響について語らず、ほとんどのマスメディアも言及しない。一体なぜなのだろうか。

 金融政策決定会合の正式文書における物価の見通しでは、日銀の見方がぶれてきている。13年4月4日の異次元緩和以降、「プラスに転じていく」だったが、13年8月8日から「プラス幅を次第に拡大していく」、14年1月22日から「暫くの間、1%台前半で推移する」と強気だった。

 ところが、消費増税の影響が明らかになると、14年10月31日に追加緩和を行い、11月19日には「当面現状程度のプラス幅で推移する」と下方修正した。

 15年1月21日には「エネルギー価格の下落を反映して、当面プラス幅を縮小する」、3月17日からは「エネルギー価格下落の影響から、当面ゼロ%程度で推移する」と、短期的な理由を原油価格下落に求めている。

 黒田総裁が「消費増税があったので需要が落ち込んだ」と言えないのは、黒田総裁自身が消費増税に積極的で、「消費増税の影響は軽微である」と言っていたからだ。実際には影響は軽微どころではなく、黒田総裁の見通しは大外れであったが、それを認められないのだ。そこまでして消費増税を進めたい黒田総裁は、日銀総裁というより、まるで古巣の財務省職員のようだ。

 マスメディアも、消費増税に賛成した大手紙などは、今さら消費増税の影響が大きかったとは言えない。だから、黒田総裁と同じ穴のムジナである。マスメディアの場合には、下手に質問して、黒田総裁の感情を害したら、その後の取材活動にも影響しかねないので質問をセーブする気持ちもあろう。

 そもそもほとんどのマスコミは財務省のいいなりで、新聞は軽減税率も念頭にあって財務省を逆なでにするような質問もしにくいのだろう。

 こういう場合には、学者などの知識人が問題を指摘しなければいけない。しかし、学会でも、財政政策に関して、「消費増税の影響」という話題はさっぱり盛り上がらない。というのも、日本の代表的な一流学者を含む多くの学者が「影響なし」と主張していたものだから、議論にならないのだ。

 多くの学者にとって、消費増税の影響は「なかったこと」にしてもらいたいのだ。うっかり悪影響について話したら、巡り巡って自らの師匠の批判になったりするから、誰も口にしない。なんともお寒い現状である。

 ついでにいうと、最近では、金融政策について「量的緩和政策の検証・評価」という題でやっても、まともな学者は討論者にならないため、学会運営で困っているらしい。多くの学者にとって、リフレ政策論争は「なかったこと」にしたいということなのだ。

 テレビやネット上では無知な敗残兵がわずかに残っているが、さすがにデキる学者は逃げ足は速い。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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