(ニュースから)「抑止力なしでは逆に戦争の可能性が高まる」 元米国務省日本部長ケビン・メア氏

 集団的自衛権の行使を容認する安倍晋三内閣の閣議決定から約40日が過ぎた。左翼勢力や一部メディアによる「戦争への道」「徴兵制になる」といった情緒的扇動も、やっと落ち着いてきた感がある。直言で知られるケビン・メア元米国務省日本部長に改めて、集団的自衛権の本質、米国の本音、安倍内閣への期待、これからの日米関係などを聞いた。

 ──安倍内閣の閣議決定をどう受け止める

 メア氏「大歓迎だ。私は国務省時代から、日本が集団的自衛権を行使できるようになればいいと考えていた。なぜなら、第1に、日本の防衛のために必要であること。第2に、日米同盟強化のために重要。第3に、東アジアの平和と安定に貢献するからだ。国務省だけでなく、国防総省、NSC(国家安全保障会議)、ホワイトハウスの友人らも喜んでいる。ベトナムやフィリピン、東南アジアの国々も歓迎している」

 ──中国と韓国が反発した

 メア氏「中国の反発は、自国の(領土的野心に基づく)挑発的行動を抑止されて、都合が悪いからだ。韓国は国内的問題で反発したのだろうが、日米同盟が強くなれば、韓国の安全保障に有利に働くことを理解すべきだ。歴史問題といっても、現在の日本と第2次世界大戦前の日本とはまったく違う。韓国は、歴史問題を乗り越える必要がある」

 ──日米同盟の絆を強めるとは、どういうことか

 メア氏「例えば、F35ステルス戦闘機と早期警戒機E2Dが離れた場所を飛んでいて、E2Dが某国からの巡航ミサイルを感知したとする。F35、E2D、イージス艦のレーダーやデータは統合され、情報をネットワークで共有しているので、F35かイージス艦のミサイルで対応できる。これが、現在と近未来の安全保障だ。将来、米軍と自衛隊の間でも統合性を期待できるようになる。優れた抑止力になる」

 ──一部の野党やメディアは「戦争に巻き込まれる」「戦争をする国になる」などと批判していた

 メア氏「完全な誤解だ。戦争の必要がないように抑止力を向上させている。ある日本人が『何も武器を持たなければ、誰の脅威にもならず、攻撃されない』と語っていたが、幼稚で非現実的な考えだ。抑止力は、蚊と蚊取り線香で考えるといい。蚊に刺されたら、ピシャリとたたいて蚊を殺す(=戦争になる)が、蚊取り線香を焚けば蚊が来ないから殺さなくてすむ(=戦争にならない)。抑止力が十分でなければ、逆に戦争の可能が高まる」

 ──なるほど

 メア氏「安倍政権はこれを理解している。東アジアの安全保障環境を見ると、目の前に中国や北朝鮮の脅威がある。中国は連日、沖縄県・尖閣諸島を武装公船で包囲している。ほぼ毎日、戦闘機も来るし、潜水艦も通っている。融和しようとすれば、中国はさらに挑発的になる。中国の行動を抑止する必要がある。このため、安倍政権は発足1年数カ月で、防衛大綱と中期防衛力整備計画を見直し、日本版NSCを創設し、特定秘密保護法を成立させた。日本の防衛能力、日米の抑止力は向上した」

 ──日本は今後、世界でどんな役割を果たすべきか

 メア氏「私は以前から、『日本がもっと地球的なリーダーシップを発揮してほしい』という立場だ。最近、米国が独自で解決できない問題がたくさん出てきた。アジアの平和と安定や、日米同盟のためにも、日本が独自の防衛能力を向上させていくべきだ。米国だけでなく、中国の脅威を受ける東南アジアでは、『日本が外交力や経済力、防衛能力を高めて、責任を果たしてくれればいい』と考える国々が多くなっている」 (政治ジャーナリスト・田村玲子)

 ■ケビン・メア 1954年、米サウスカロライナ州生まれ。81年にジョージア大学ロースクールで法務博士号(JD)を取得し、半年間の弁護士事務所勤務を経て、国務省に入省。駐日米国大使館安全保障部副部長や沖縄総領事、国務省東アジア・太平洋局日本部長などを歴任。対日政策のエキスパートで、日米間の強固な関係構築に努めてきた。2011年に国務省を退職。

「抑止力なしでは逆に戦争の可能性が高まる」 元米国務省日本部長ケビン・メア氏 (1/2ページ) – 政治・社会 – ZAKZAK
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