(ニュースから)「何を証明しているのか…」 渋谷区同性パートナー条例に“戸惑い”の声

「何を証明しているのか…」 渋谷区同性パートナー条例に“戸惑い”の声 – Infoseek ニュース
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 同性同士のカップルに「結婚に相当する関係」を認め、「パートナーシップ証明書」を発行する東京都渋谷区の条例が1日、施行された。全国初の条例は3月31日の区議会本会議で賛成多数で可決、成立したが、一部の区議からは「議論が尽くされていない」などの反対意見が相次いだ。性的少数者の当事者は喜ぶ一方、区民からは賛否の声が入り交じるなど、条例をめぐる議論は続きそうだ。

■「拙速極まりない」「世界的な流れ」と区議会でも賛否

 31日の区議会本会議には、用意された58の傍聴席を上回る人が訪れ、議場に入れなかった人たちは議場外のロビーに設置されたモニターで、議会の様子を見守った。

 条例案への反対討論に立った佐藤真理区議(自民)は、区が条例案の作成に当たり設置した検討会の結論が、条例案を審査する区議会総務区民委員会に報告されなかったことなどの経過を指摘。「議会と行政の良好な関係を根底から揺るがすもので、議会軽視も甚だしい」と区側を厳しく批判し、「拙速極まりない、未完成な条例案だ」と述べた。

 また、笹本由紀子区議(無所属)は「いくつかの問題を抱えたまま、条例案の決定を迎えた。議論が尽くされたとは思っていない」と強調した。

 一方、賛成討論に立った長谷部健区議(無所属クラブ)は「20~30年も経てば、パートナーシップ証明書も普通のことになる。世界的にもこの流れは止まることはない。憲法違反という批判もあるが、多くの弁護士は違憲ではないと言っており、良識ある判断をお願いしたい」と述べた。

■自公“異例”の分裂

 渋谷区議会は32人(欠員2)で構成され、討論後に行われた採決では、議長を除き自民7人と無所属3人が反対、公明や共産など残る21人が賛成した。自民と公明の態度が分かれたことに、区議会事務局は「採決で自民と公明の意見が分かれたケースは記憶にない」としている。

 条例成立後、LGBT(同性愛者、両性愛者、性別に違和感のある人)の当事者たちは、区役所前で喜びを分かち合った。

 女性として生まれたが、現在は男性として社会生活を送っている杉山文野(ふみの)さん(33)は「国でやるといってもやらずに終わってしまう可能性があるので、小さな自治体で始め、悪いところを洗い出してから国がスタートすればいい」と話した。

 また、桑原敏武区長は区議会閉会後に記者会見を開き、「人権上の課題として、一石を投じる歴史的な一ページになった」と条例の意義を強調。作成過程が拙速だったなどの批判については「新しいことについて、自分たちの立場にマッチしなければしないほど、批判が出る。まず第一歩を踏み出したいという気持ちでやってきた」と述べた。

■「証明書あってもいい」「自治体で話す問題じゃない」区民にも賛否

 全国初の条例に、区民からは賛否の声が聞かれた。「性的少数者が不便がない生活を送るために、証明書が必要ならあってもいいと思う」と60代の自営業の男性は、条例に対して理解を示した。50代の女性会社役員は「憲法違反という意見もあるけど、証明書が必要な人の元に届けば意義があるものになる」と話した。

 一方、区役所近くに住む男性は「この条例は急に出てきた話で、いつの間にか成立してしまった。今後も、区民に十分な説明がない状態で、さまざまな制度が決まっていくと考えると怖い」。また、70代の自営業の男性は「法整備もされていない中で、同性婚を認めるような内容は、自治体単位で話し合うようなものではない」と批判した。

 渋谷区は条例の作成について、同性カップルがアパートの入居などの際に家族ではないと断られるケースが多いため、性的少数者への支援策として作成したと説明してきた。

 だが、区内の不動産会社は「同性だろうが、異性だろうが、トラブルがなくて身分がしっかりしていれば、通常は入居できる。区が出す証明書が何を証明するものなのかが分からず、持ってこられても困る」と疑問を呈した。

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